第68回「カンヌ映画祭2015」

5月中旬のパリ・シャルル・ド・ゴール空港でニース行きの飛行機を待っていると、恐らく映画関係者や広告代理店にお勤めの方、テレビや雑誌のクルーの方が、とても沢山いらっしゃることに気づきます。

 
もしかしたら搭乗を待っている人の1/3ぐらいは、映画祭に向かうのでは?と思ってしまうほど。 実際は、観光客も含めるともっと多いのかもしれません。
この季節のカンヌには世界中から関係者が集まるといわれ、美女という美女が集まり、華やかな、それでいてちょっとクレイジーな「カンヌ映画祭」と称したお祭り騒ぎになります。
映画祭を含めた我々の南仏の旅は、 もうここシャルル・ド・ゴールからすでに始まっているようです。

今日からお世話になる五つ星ホテル「LE MAS CANDILLE」、素敵なホテルです。
今回、フランス・ルノー社からのご招待ということで、ルノーのご招待客は皆こちらへお泊りとのこと。
広大な敷地へ入って行くと、山間の街が一望できる高台にこのホテルが建っていることが分かりました。

着いて早々、今日の招待者たちとのお顔合わせを兼ねたランチ会に出席(写真下)。

 お酒をいただいてほろ酔い気分です

時差で上手く睡眠が取れず寝不足ぎみでしたが、南仏の底抜けに明るい太陽と皆さんの笑顔で、少しずつ元気に。これから長~い一日が始まります。

「 さぁ、映画祭に繰り出しましょう!」 とばかり、正装に着替えて皆で写真を撮りました。
男性陣、もう完全に出来上がっていますね(笑)。

専用オフィシャル・カーに分乗して会場へ向かったのはいいのですが、 途中渋滞で車が動かず。

すぐ近くまで来ているようなのですが‥。

その時、びっくりすることが起こりました。

招待者の車に乗っていた浦久を見て、中国の観光客の皆さんが一斉に歓喜の声を上げ、浦久に手を振ったり、写真を撮り始めたのです(写真下)。

我々の乗った車がノロノロ進むにつれ、中国の皆様の歓声のウェーブが車とともに巻き起こっていくではありませんか!!

「完全な人違い」 。

あまりの歓声にあっけに取られ、気づくのに暫くかかりました‥‥。

中国の俳優さんか映画監督に間違われた、光栄な浦久(笑)。

この時までとても緊張していたのですが、人違いとはいえ中国の皆様の声援のおかげで、 なんだかすっかり笑ってしまって、緊張がほぐれました。

(写真右)左からヴェルサイユ宮殿館長/オリヴィエ・ジョス氏、2014年ミス日本/沼田萌花さん、浦久。
着物をアレンジしたドレスがお似合いの萌花さんは、映画「sayuri」をイメージして日本髪をオーダーしたとか。彼女のおかげでルノー・チームが華やいでいましたよ。

レッドカーペット、緊張しすぎてしまって‥‥足が震えました。
もっと余裕で周りを見ながら楽しみたかったのですが、ドレスの裾を踏んで転ばないかとそればかり(笑)。
階段を上がって後ろを振り返って見ると、、、長い道のりでした(笑)。

第68回「カンヌ映画祭2015」の顔は、かのイングリット・バーグマン(写真左下)。
今年は、イングリット・バーグマン(1915年生まれ)の生誕100年にあたる式典とのこと。
「追憶」「ガス燈」など名作揃いですが、代表作はやはり「カサブランカ」ですよね。

沢山の俳優陣の中でも、ナタリー・ポートマンさんの登場は一際目立ちました(写真右上)。
実際の彼女は、スクリーンの中で見るよりもずっと華奢で、それでいてナチュラルな印象です。

さて、映画祭のオープニングセレモニーを飾ったのは、エマニュエル・ベルコ監督の新作『スタンディング・トール(英題) / Standing Tall』。女性監督作がカンヌ映画祭のオープニングを飾るのは、第40回のディアーヌ・キュリス監督以来28年ぶりのこと。
同作は、家庭環境に問題を抱えトラブルを起こしてばかりの少年マロニーが、少年裁判所を何度も訪れながら6歳から18歳になるまでを、彼を救うためにひたすら尽力する裁判官とカウンセラーの姿と共に描いたフランス映画。
脚本に魅了されたという『シェルブールの雨傘』などの大女優カトリーヌ・ドヌーヴが裁判官役、『ピアニスト』のブノワ・マジメルがカウンセラー役、新鋭ロッド・パラドットがマロニー役で出演しているのですが、この主役を演じた新人俳優ロッド・パラドットの演技が特に素晴らしかった!

子供たちを救うことがいかに難しいことであるかを描くと同時に、その重要さを丹念に映し出したベルコ監督は、「わたしたちはこの映画を(少年裁判所の裁判官やカウンセラーといった)光が当てられることのない職業の人々にささげています。オープニング作品として上映されることで話題になれば、素晴らしいことだと思います」とコメントしていました。

最後は新人俳優ロッド・パラドットの熱演に対し、会場から10分以上のスタンディングオベーションが鳴りやまず。そして前方のスクリーンにアップで映し出されたパラドットの目からは、大粒の涙が‥‥流れていました。
若干17歳で世界中から称賛された彼の、今後の演技に期待ですね!

夢のような映画祭オープニングから一夜が明けて、翌日のランチでは、2日目の招待客が続々と到着していました。ルノーのスタッフの皆様、入れ代わり立ち代わりの招待客をもてなし、映画祭の1週間は本当に大変です。
昨日もご一緒いただいた、日仏経済交流委員会の富永典子さん(写真上/右)。
以前は、カルロス・ゴーン氏の秘書を務められていたキャリアの持ち主、実に聡明な女性です。
浦久ともすっかり意気投合して‥話はつきませんね(笑)。
後日ご主人も交えて、パリ・マレ地区で楽しい夕食をご一緒いただきました。

こうして今回、カンヌで貴重な体験をさせていただきましたが、映画文化の素晴らしさと、関係者の作品にかける情熱を間近で観れたことが何より素晴らしかったです。
評価する側も、作品と製作者へのリスペクトを決して忘れず‥‥ 。
芸術に携わることの原点をもう一度考えさせられた貴重な時間となりました!