ヴェルサイユ宮殿・秘密の部屋

ヴェルサイユ宮殿といえば、フランス王ルイ14世(1638年~1715年)が建てた バロック建築の代表作。
パリに代わる新たな都をつくるのが目的で、かつては沼地だったこの地に、土が運ばれ、森がつくられ、川の流れまで変えられました。
この「史上最大かつ最高の城」の建設には約半世紀という月日が費やされ、1682年にはパリから王宮がこのヴェルサイユに移されます。
王にとっては、連日連夜ここで開かれる晩餐会が、国家安泰のための方策だったのだそう。
敵対する勢力の力を奪い、王に忠誠を誓わせるためだった‥‥といわれています。

今日はそんな壮大なヴェルサイユ宮殿の奥の奥に潜む「音楽にまつわる」特別な場所や物を見せていただけるということで、朝から楽しみにやってきました。
今回の取材を兼ねたプライベートツアーは、友人のヴェルサイユ宮殿・館長/オリヴィエ・ジョス氏(写真上/右)の粋な計らいです。
我々をご案内くださるのは、毎日VIP客を相手に宮殿をご案内していらっしゃるというヴェルサイユ宮殿・広報部長/ドミニク・アヴァール氏(左)。
VIPでもなんでもない我々ですが、アテンドをお引き受けいただき恐縮です‥‥。
「昨日はドイツのメルケル首相を一日ご案内しましたよ」と気さくに語るドミニクさんなのですが、なにせお話がVIP過ぎます。
できましたら、今日はごくごく庶民対応でお願いいたします。
そして浦久の持つこの鍵、今日はこの鍵がすべての「カギ」になります!

まずは、「王室礼拝堂」へ(写真)。 

ヴェルサイユの王族たちは、毎朝必ず午前10時からこちらでミサを行っていたとか。
通常はあちら側の扉から礼拝堂を拝見(写真左下)。
ドミニクさんの説明を聞きながら、中へ進んでいきます(写真右下)。

今日は、正面のパイプオルガンを見せていただけるということなのですが‥。

「おぉ!豪華」。王室用ということで、選び抜かれた素材を使って贅を尽くして作られた‥という感じでしょうか、実に立派なパイプオルガンです。
ドミニクさんがオルガンの蓋を開けると(写真左下)、中も細工が丁寧ですねー。

次の場所は、正面の扉を入って行くようです(写真右上)。
すべての扉には鍵がかかっていて、ドミニクさんは大きな鍵束から一本を取り出すのですが、その早いこと。
迷路のような宮殿内の立ち入り禁止区域も縦横無尽に進んで行きます(写真下)。

「次の場所は?」とドミニクさんに伺うと、なぜかニンマリして教えてくれません。
どこなのでしょう‥。
扉の前に着きました(写真下)。扉の上には何か文字が、、、「ん?ルイの部屋??」。

ドミニクさんから「今から王の桟敷席です」と案内されたのは、「宮廷オペラ劇場」内のルイとその家族しか入れないという桟敷席(写真下)。
思わず天を仰ぎました。

「この王の部屋はめったに開けることがありません。我々も特別な場所として扱っています。直近で入ったのは、故ダイアナ妃がいらっしゃった時で、その前は確か‥エリザベス女王が来仏した時でした」とドミニクさん。
ダイアナ妃って‥‥。エリザベス女王‥‥。
直近とおっしゃいましたが、それから有に15年以上も開けていなかったということでしょうか。
写真を撮る手が思わず、震えました(笑)

 ルイ専用の桟敷席

何年か後に、次のお客様をご案内したドミニクさんはやはりそのご自身の記憶に基づき、「この部屋はめったに開けることのない場所で‥‥確か直近では‥‥浦久俊彦事務所ご一行様でした」とご紹介くださるのでしょうか。
故ダイアナ妃の後で、小者過ぎです(笑)
恐れ多い体験をありがとうございました!

次に向かうのは、8歳のモーツァルトが初めてヴェルサイユ宮殿を訪れ、演奏をしたという間です。内輪で使う部屋ということで、こちらも非公開(写真下)。

演奏のためだけに使用されたプライベートな空間だったとのこと。
お父さんとお姉さんと一緒に訪れたモーツァルトの演奏は、皆を驚嘆させたのだとか。
10畳ほどの小さな部屋ですが、時の流れを超えてモーツァルトの演奏が聴こえてくるような、特別な趣のある空間でした。

壁を見ていただくと、、、分かりますか?
演奏のために作られた部屋ということで、壁の装飾がすべて楽器になっています。
ヴェルサイユ宮殿の特筆すべきところは、こういう細部が素晴らしかった。

その後、非公開の王室図書館などをご案内くださってから、やっと観光客のいる場所へ。
沢山の人々がいる場所へ戻って、ちょっとホッとしました(笑)
肖像画を鑑賞しながら音楽にまつわる人物のお話や、保存されている楽器など、宮殿内には「音楽」という切り口でこんなにも沢山の素材があったことに驚きます。

こちらはチェンバロ(写真下)。カバーが掛けられている方は、随分古いもののよう。
打楽器もありますね。原始的だけれど、やっぱり打楽器ってどこの国にもありますよね。

ドミニクさんのご案内のおかげで、素晴らしい場所や物を沢山拝見できました。
そして、ここで目にしたこと、触れたもの、聞いたことはすべて、今も生き続けているヴェルサイユ宮殿そのものでした。
「その栄華の頂点から、フランス革命の勃発によって一気に奈落の底に転落するフランス王族の劇的な運命を思う時、音楽からみたヴェルサイユ宮殿の歴史と、激動のフランス史からこぼれ落ちたいくつかの光景をいつか一冊の本にまとめてみたい」と浦久が帰る道で言っておりました。
「そこからはこれまで語られてこなかった、知られざるもうひとつのフランスが、きっと見えてくるのではないか」とも。

オリヴィエ、ドミニクさん、優雅なひとときを有難うございました。